攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG / 第25話「楽園の向こうへ THIS SIDE OF JUSTICE」
スカイパーフェクTV!:2005年1月8日放送
DVD発売:2005年3月発売
STAFF
脚本:神山健治 絵コンテ・演出:松本淳 作画監督:中村悟
PREV >> 第24話「出島,空爆 NUCLEAR POWER」
NEXT >> 第26話「憂国への帰還 ENDLESS∞GIG」
-----------------------------------------------------------------------------------
クゼ「先に行け。」
難民1「よせ!」
バトー「フォーメーションBか。このまま一階通路を移動だ。向こうが速度を上げる前に撒くぞ。」
サイトー「分かった。」
4課課員「待て、妙だ。ECMが効いていない。何かあったらしい。全員回線をオンにしろ。フォーメーションAで追う。」
荒巻「プロト。ドアをロック出来るか?」
プロト「はい。すみません、手を煩わせてしまって。」
荒巻「構わんよ。それよりどうだ、タチコマ達からの報告は?」
プロト「はい。原潜に動きはないようです。それと出島の哨戒機が墜落した様です。」
荒巻「難民が撃ち落としたのか?」
プロト「よく分かりませんが、恐らく。」
荒巻「と言う事は出島との通信も可能だな。」
トグサ「あれか。」
見張り1「ん?」
見張り2「おい!」
トグサ「気にしないでくれ。ちょっと官房長官に言われてね。」
トグサ「国家的緊急事態って奴でね。許せよ。」
トグサ「総理。お迎えに参りました。荒巻課長がお力をお借りしたいとの事です。一緒に来てください。」
茅葺「分かりました。連れて行ってください。」
内庁職員:代表。海自の哨戒機が撃墜された模様です。
ゴーダ:ほう。孤立した難民をもう一度一つにまとめようと言う訳だ。
ゴーダ(そろそろ仕上げだな。)
ゴーダ:防衛庁を誘導し艦砲射撃を行わせろ。
内庁職員:分かりました。
ゴーダ「ふむ・・・」
ゴーダ:誰かいるか?
内庁職員:はい。
ゴーダ:手紙を投函して貰いたい。
内庁職員:手紙、ですか・・・?
ゴーダ:そうだ。速達でな。
素子:タチコマ!聞こえるか!?
タチコマ:聞こえます少佐!少佐の位置を確認しました!
素子:バトー達はどうした?
タチコマ:無事です。建物の中のようで、姿は確認出来ません。
素子:こっちはクゼを見つけた。バトー達に居場所を伝えろ。
タチコマ:はい!
タチコマ:少佐、それより大変な事が・・・
素子:何だ?
タチコマ:実は、沖縄沖に米帝の原子力潜水艦が停泊していて、どうやら出島に向けて核ミサイルを発射するつもりのようです。
素子:確かか?状況を映像で見せろ。
タチコマ:了解。
バトー:何だと!?何の為にこいつを持ち込んだんだ!?糞っ垂れ!査察団の到着はどうなってる?少佐!
素子:バトー。お前達はプルトニウムを持って今すぐ橋に向かえ。査察団の到着前に核ミサイルを使うつもりだ。今すぐ橋を閉鎖している自衛軍にプルトニウムを渡し事態を説明しろ。
バトー:少佐こそ早く脱出しろ。こっちはちと厄介な連中に追われてる。出来るだけ急いじゃあみるが、ちょいとばかりやばいかもしれねえ。
素子:何者だ?その追っ手は。
バトー:恐らく、レンジャー4課だ。
素子:間違い無いのか?
バトー:ああ。プルトニウムを回収する為に俺達を追ってきた様だ。」
素子:私もすぐ合流する。何としても逃げ延びろ。
バトー:まあやってみるがな。行くぞ!
クゼ「会うのは3度目、いや4度目か。何故俺を追う?」
素子「ここに来るのに随分手を焼いた。約束通りプルトニウムは持って来た。私と一緒に来い。でないと難民を含め甚大な被害が出る。その責任の全てをお前に着せた上でな。」
クゼ「この先、何が起こる?」
素子「恐らく、難民の自爆を装った核攻撃だ。」
クゼ「何だと・・・!?お前は誰だ?」
タチコマ:おい見ろ。原潜のハッチが開き始めた。
タチコマ:不味いな。もういつ発射されてもおかしくない。
タチコマ:この型は、成層圏迄撃ち上げるタイプだ。
タチコマ:攻撃を目撃されない様にするつもりなんだな。
タチコマ:ええっ!放射能は除去出来ても、長崎や出島に派遣される自衛軍迄巻き込む規模だよ?
タチコマ:無茶するなー。何とか攻撃を食い止める方法って無いのか?
タチコマ:この映像を世界中に配信してみては?
タチコマ:意味無いよ。映像に証拠能力ってもう存在しないし、どうせ出所の分からないタイムリーな映像として関係ない一般大衆を楽しませるだけだよ。
タチコマ:でもでも、このままでは!
タチコマ:おい。核攻撃より先にイージス艦がミサイル攻撃を開始するみたいだぞ。
バトー:追いつかれたか。
サイトー:そうらしい。
バトー:フォーメーションを変えたな。光学迷彩をかけろ。タチコマ。奴等の暗号通信を見つけて枝を付けられるか?
タチコマ:やってみます。でも気を付けてください。もうすぐイージス艦からのミサイル攻撃があります。居住区への直接攻撃は無いと思いますけど、何処に着弾するか分からないので。
バトー:核ミサイルの方は?
タチコマ:今の所はまだ。
ボーマ:早速始まった様だ。
パズ:こっちに来たぞ。
素子「ちっ、始まったか。時間が無い。一緒に自衛軍に投降しろ。さもなくば力ずくでも連れて行く・・・どうする?」
クゼ「いいだろう。今俺にネットしてきている難民に状況を説明している。最終的な判断は彼等に任せるが、とりあえず橋に向かおう。」
素子:タチコマ、ミサイルの軌道は
アナウンサー「出島からのミサイル攻撃に対し自衛軍の反撃が開始された模様です。政府の発表によると、国連査察団を入れる際の安全を確保する為に止むを得ない措置だと。」
イシカワ「始まっちまったな。」
イシカワ:タチコマ、少佐達は無事なのか?
タチコマ:少佐とは通信が途絶えました。バトーさん達は無事ですが・・・
イシカワ:追っ手は4課か?
タチコマ:はい。
タチコマ「お待たせしましたー!出島の状況聞いてるだけでもうハラハラしてー。」
イシカワ「お前がハラハラしてどうする。俺達は俺達で今やれる事をやるぞ。」
タチコマ「了解。」
素子「大丈夫か?」
クゼ「ああ。とりあえず収まった様だな。」
素子:タチコマ、状況は?
タチコマ:おお!
タチコマ:少佐!無事だったんですねー!
素子:ああ。何とかな。
タチコマ:核ミサイルはいつ発射されてもおかしくない状況です。すぐそこから脱出して下さい。
素子:政府から何か発表は?
タチコマ:査察団を入れる為の暫定的な空爆を繰り返すと言う発表はありましたが・・・
クゼ「駄目だ。閉じ込められたな。」
素子「そうか。」
タチコマ:少佐、まさか!
素子:ああ。瓦礫の下だ。後はバトー達に任せるしかなさそうだ。
タチコマ:そんな!何とか脱出出来ないんですか?
素子:やってはみるが・・・バトー達の方を全面的にバックアップしろ。
タチコマ「了解。」
素子「難民とは繋がっているのか?」
クゼ「ああ。かなりの数が戻ってきている。殆どの者が今の空爆でパニック状態の様だがな・・・核攻撃があると言ったな。お前はどうやってその事を知った?お前は何処の組織の人間だ?」
素子「私はこれでも警察官だ。個別の十一人の犯行を洗う道すがらで政府内部に難民排斥を物理的に行うプロジェクトを発見し、それを暴く為にお前を追っていた。」
クゼ「では何故プルトニウムを?」
素子「お前の手にプルトニウムが渡っていない事が分かっていたからだ。そこで、福岡で使用された核爆弾を奪取しそれで事態を終息させようと試みたが、敵の描いていた筋書きは予想以上に早かった。まさか米帝に核攻撃の約束迄取り付けていたとはな。」
クゼ「そのプルトニウムはどうした?」
素子「仲間が自衛軍の所に運んでいる筈だが、追跡してきた部隊に阻まれそれも難しくなった。」
クゼ「そうか。もう俺を投降させる事は諦めたのか?」
素子「諦めてはいないが・・・」
クゼ「さっき俺のハブ電脳のゾーニングとフィルタリングを解いた。今ここで起きている出来事に誰もがネット出来る様にな・・・脱出出来るかやってはみるが、俺は俺の革命も同時に進行させる。核攻撃があると聞いてその決心がついた。」
素子「決心?革命とは何だ?」
バトー:タチコマ、まだ奴等の通信に枝は付けられねえのか?
タチコマ:はい。素数を元にランダムで暗号を変えている様なので・・・
バトー:ん?伏せろ!
バトー:移動する。
パズ:分かった。
ボーマ:ああ。
バトー:外へ逃げるぞ。タチコマ、枝は?
タチコマ:もう少しです。
素子「クゼ。お前は何故難民のリーダーになった?そもそも、ウイルスによる思想誘導からどうやって抜け出した?」
クゼ「俺は元々難民を解放しようと言う目的があった。その為個別の十一人が発症した訳だが、奴等と行動を共にした時思想の差異に気付いた。ウイルスが分離出来たのもその為だろう。」
素子「では何故難民の解放を?ユーラシアを彷徨った様だが、それと関係があるのか?」
クゼ「それは・・・直接関係無い。大陸を旅したのは自分の動機を再確認する時間が欲しかっただけだ。俺がイメージする革命、解放を実行する事が出来るのかをな。」
素子「お前の言う革命とは何だ?」
クゼ「人の、上部構造への移行。硬化したシステムを捨て、人とネットとが融合すると言う事だ。」
素子「ネットと融合するだと?」
タチコマ:4課の通信コードの解析はどうだ?
タチコマ:うーん、もうちょい・・・
タチコマ:何とかこの原潜にハッキングをかけられないかな?
タチコマ:まず無理だよ。何せ作戦行動中の潜水艦は完全なスタンド・アローンだから。
タチコマ:乗組員の個人メールとかどう?規則違反の乗組員とかに枝を付ければ・・・
タチコマ:成る程。試してみる価値はあるかも。
トグサ「課長、お連れしました。」
荒巻「プロト、ドアを開けろ。」
荒巻「茅葺総理、ご無事でしたか。」
茅葺「状況は聞きました。米帝とのホットラインをこの部屋に回せるでしょうか?私から核攻撃の中止を要請してみます。」
荒巻「お願いします。彼等がこの事態を認めるかどうかが鍵ですが。」
茅葺「そうですね。」
4課課員「動くな!周囲を取り囲んだ!プルトニウムを置いて光学迷彩を切れ!」
タチコマ:バトーさん、枝が付きました!
バトー「分かった!今置く!」
バトー:ケースを置くのと同時に壁際迄ダッシュしろ。
サイトー&パズ&ボーマ:了解。
4課課員「動くな!同士撃ちになる!」
バトー「今から光学迷彩を解く。その上で、まだ任務を遂行する気があるなら俺を撃て。だが俺の顔を見て納得したら話を聞け。大事な事だ。」
4課課員「お前・・・」
4課課員「その目は・・・元レンジャーか?」
バトー「そうだ。」
クゼ「俺は半島での出来事で人生を達観した。矛盾した秩序、強者による搾取、腐敗した構造。だが俺を最もがっかりさせたのは人々の無責任さだった。自分では何も生み出す事無く何も理解していないのに、自分にとって都合の良い情報を見つけると逸早くそれを取り込み踊らされてしまう集団。ネットと言うインフラを食いつぶす動機無き行為が、どんな無責任な結果をもたらそうとも何の責任も感じない者達。俺の革命とはそういった人間への復讐でもある。」
素子「復讐?」
クゼ「俺は子供の頃から全身義体だった為に心と体の不一致を絶えず感じていた。出来る事なら不自由な体を捨て、ネットの海へ漕ぎ出したいと考えていた。そんな俺にアジア難民達は少なからず生きる希望を与えてくれた。彼等は俺の作り物の顔をとてもいい顔だと言い、ゴーストが顔に現れているのだと褒めてくれた。俺はその時初めて肉体と精神は不可分な存在なのではないかと実感し、自分も肉体を持つ人間なのだと思う事が出来た。だが、そんな彼等も一度口当たりの良い情報に出会うと、やはり都合の良い方向へと簡単に流れていってしまう。人間は元々低きに流れる様に出来ている物らしい。」
素子「で、復讐をどう果たすつもりだ?」
クゼ「俺に結線している者の記憶とゴーストをネット上に運び去る。核が投下されればそれで彼等も肉体を喪失するが強制的な進化を遂げる可能性が手に入る。」
素子「彼等がネット上で個を特定し続けられる可能性は?」
クゼ「それは分からない。だが先駆者として下部構造に残った人間に対し絶えず上部構造を意識させ、啓発していく存在にはなれるだろう。太古の昔人類が霊的な存在に対し尊敬や畏怖を感じてきた様にな。」
素子「それがお前を落胆させた者達への復讐と救済か?」
クゼ「俺は革命と信じているがな。お前も見た所全身義体の様だな。なら肉体と精神の不一致と言う疑心暗鬼に悩まされた経験は少なくはあるまい。どうだ、俺と一緒に来るか?」
素子「難民は、行くつもりなのか?」
クゼ「ああ。残念ながらな。彼等の多くは核による自爆テロと言うシナリオを実践する事の方を望んでいる。自分達は負けなかったと思い込みたいんだろう。それもまた低きに流れる行為だと言うのに・・・」
素子「そうか。」
素子:バトー。私は今からクゼの言う方法で難民を救出してみる。お前は核攻撃の事実を自衛軍に知らせるんだ。聞いてるか?バトー。
バトー「馬鹿野郎・・・!お前を一人で行かせやしない・・・待ってろ・・・行かせやしねえぞ!」
サイトー「何を待ってるんだ?」
ボーマ「分からん。」
4課課員「とにかくこれを持っていこう。陸自も我々の話なら信じるかもしれん。」
陸自隊員「第二次空爆が終了し次第出島内に進攻、査察団の受入れ準備に入る。」
DVD発売:2005年3月発売
STAFF
脚本:神山健治 絵コンテ・演出:松本淳 作画監督:中村悟
PREV >> 第24話「出島,空爆 NUCLEAR POWER」
NEXT >> 第26話「憂国への帰還 ENDLESS∞GIG」
-----------------------------------------------------------------------------------
クゼ「先に行け。」
難民1「よせ!」
バトー「フォーメーションBか。このまま一階通路を移動だ。向こうが速度を上げる前に撒くぞ。」
サイトー「分かった。」
4課課員「待て、妙だ。ECMが効いていない。何かあったらしい。全員回線をオンにしろ。フォーメーションAで追う。」
荒巻「プロト。ドアをロック出来るか?」
プロト「はい。すみません、手を煩わせてしまって。」
荒巻「構わんよ。それよりどうだ、タチコマ達からの報告は?」
プロト「はい。原潜に動きはないようです。それと出島の哨戒機が墜落した様です。」
荒巻「難民が撃ち落としたのか?」
プロト「よく分かりませんが、恐らく。」
荒巻「と言う事は出島との通信も可能だな。」
トグサ「あれか。」
見張り1「ん?」
見張り2「おい!」
トグサ「気にしないでくれ。ちょっと官房長官に言われてね。」
トグサ「国家的緊急事態って奴でね。許せよ。」
トグサ「総理。お迎えに参りました。荒巻課長がお力をお借りしたいとの事です。一緒に来てください。」
茅葺「分かりました。連れて行ってください。」
内庁職員:代表。海自の哨戒機が撃墜された模様です。
ゴーダ:ほう。孤立した難民をもう一度一つにまとめようと言う訳だ。
ゴーダ(そろそろ仕上げだな。)
ゴーダ:防衛庁を誘導し艦砲射撃を行わせろ。
内庁職員:分かりました。
ゴーダ「ふむ・・・」
ゴーダ:誰かいるか?
内庁職員:はい。
ゴーダ:手紙を投函して貰いたい。
内庁職員:手紙、ですか・・・?
ゴーダ:そうだ。速達でな。
素子:タチコマ!聞こえるか!?
タチコマ:聞こえます少佐!少佐の位置を確認しました!
素子:バトー達はどうした?
タチコマ:無事です。建物の中のようで、姿は確認出来ません。
素子:こっちはクゼを見つけた。バトー達に居場所を伝えろ。
タチコマ:はい!
タチコマ:少佐、それより大変な事が・・・
素子:何だ?
タチコマ:実は、沖縄沖に米帝の原子力潜水艦が停泊していて、どうやら出島に向けて核ミサイルを発射するつもりのようです。
素子:確かか?状況を映像で見せろ。
タチコマ:了解。
バトー:何だと!?何の為にこいつを持ち込んだんだ!?糞っ垂れ!査察団の到着はどうなってる?少佐!
素子:バトー。お前達はプルトニウムを持って今すぐ橋に向かえ。査察団の到着前に核ミサイルを使うつもりだ。今すぐ橋を閉鎖している自衛軍にプルトニウムを渡し事態を説明しろ。
バトー:少佐こそ早く脱出しろ。こっちはちと厄介な連中に追われてる。出来るだけ急いじゃあみるが、ちょいとばかりやばいかもしれねえ。
素子:何者だ?その追っ手は。
バトー:恐らく、レンジャー4課だ。
素子:間違い無いのか?
バトー:ああ。プルトニウムを回収する為に俺達を追ってきた様だ。」
素子:私もすぐ合流する。何としても逃げ延びろ。
バトー:まあやってみるがな。行くぞ!
クゼ「会うのは3度目、いや4度目か。何故俺を追う?」
素子「ここに来るのに随分手を焼いた。約束通りプルトニウムは持って来た。私と一緒に来い。でないと難民を含め甚大な被害が出る。その責任の全てをお前に着せた上でな。」
クゼ「この先、何が起こる?」
素子「恐らく、難民の自爆を装った核攻撃だ。」
クゼ「何だと・・・!?お前は誰だ?」
タチコマ:おい見ろ。原潜のハッチが開き始めた。
タチコマ:不味いな。もういつ発射されてもおかしくない。
タチコマ:この型は、成層圏迄撃ち上げるタイプだ。
タチコマ:攻撃を目撃されない様にするつもりなんだな。
タチコマ:ええっ!放射能は除去出来ても、長崎や出島に派遣される自衛軍迄巻き込む規模だよ?
タチコマ:無茶するなー。何とか攻撃を食い止める方法って無いのか?
タチコマ:この映像を世界中に配信してみては?
タチコマ:意味無いよ。映像に証拠能力ってもう存在しないし、どうせ出所の分からないタイムリーな映像として関係ない一般大衆を楽しませるだけだよ。
タチコマ:でもでも、このままでは!
タチコマ:おい。核攻撃より先にイージス艦がミサイル攻撃を開始するみたいだぞ。
バトー:追いつかれたか。
サイトー:そうらしい。
バトー:フォーメーションを変えたな。光学迷彩をかけろ。タチコマ。奴等の暗号通信を見つけて枝を付けられるか?
タチコマ:やってみます。でも気を付けてください。もうすぐイージス艦からのミサイル攻撃があります。居住区への直接攻撃は無いと思いますけど、何処に着弾するか分からないので。
バトー:核ミサイルの方は?
タチコマ:今の所はまだ。
ボーマ:早速始まった様だ。
パズ:こっちに来たぞ。
素子「ちっ、始まったか。時間が無い。一緒に自衛軍に投降しろ。さもなくば力ずくでも連れて行く・・・どうする?」
クゼ「いいだろう。今俺にネットしてきている難民に状況を説明している。最終的な判断は彼等に任せるが、とりあえず橋に向かおう。」
素子:タチコマ、ミサイルの軌道は
アナウンサー「出島からのミサイル攻撃に対し自衛軍の反撃が開始された模様です。政府の発表によると、国連査察団を入れる際の安全を確保する為に止むを得ない措置だと。」
イシカワ「始まっちまったな。」
イシカワ:タチコマ、少佐達は無事なのか?
タチコマ:少佐とは通信が途絶えました。バトーさん達は無事ですが・・・
イシカワ:追っ手は4課か?
タチコマ:はい。
タチコマ「お待たせしましたー!出島の状況聞いてるだけでもうハラハラしてー。」
イシカワ「お前がハラハラしてどうする。俺達は俺達で今やれる事をやるぞ。」
タチコマ「了解。」
素子「大丈夫か?」
クゼ「ああ。とりあえず収まった様だな。」
素子:タチコマ、状況は?
タチコマ:おお!
タチコマ:少佐!無事だったんですねー!
素子:ああ。何とかな。
タチコマ:核ミサイルはいつ発射されてもおかしくない状況です。すぐそこから脱出して下さい。
素子:政府から何か発表は?
タチコマ:査察団を入れる為の暫定的な空爆を繰り返すと言う発表はありましたが・・・
クゼ「駄目だ。閉じ込められたな。」
素子「そうか。」
タチコマ:少佐、まさか!
素子:ああ。瓦礫の下だ。後はバトー達に任せるしかなさそうだ。
タチコマ:そんな!何とか脱出出来ないんですか?
素子:やってはみるが・・・バトー達の方を全面的にバックアップしろ。
タチコマ「了解。」
素子「難民とは繋がっているのか?」
クゼ「ああ。かなりの数が戻ってきている。殆どの者が今の空爆でパニック状態の様だがな・・・核攻撃があると言ったな。お前はどうやってその事を知った?お前は何処の組織の人間だ?」
素子「私はこれでも警察官だ。個別の十一人の犯行を洗う道すがらで政府内部に難民排斥を物理的に行うプロジェクトを発見し、それを暴く為にお前を追っていた。」
クゼ「では何故プルトニウムを?」
素子「お前の手にプルトニウムが渡っていない事が分かっていたからだ。そこで、福岡で使用された核爆弾を奪取しそれで事態を終息させようと試みたが、敵の描いていた筋書きは予想以上に早かった。まさか米帝に核攻撃の約束迄取り付けていたとはな。」
クゼ「そのプルトニウムはどうした?」
素子「仲間が自衛軍の所に運んでいる筈だが、追跡してきた部隊に阻まれそれも難しくなった。」
クゼ「そうか。もう俺を投降させる事は諦めたのか?」
素子「諦めてはいないが・・・」
クゼ「さっき俺のハブ電脳のゾーニングとフィルタリングを解いた。今ここで起きている出来事に誰もがネット出来る様にな・・・脱出出来るかやってはみるが、俺は俺の革命も同時に進行させる。核攻撃があると聞いてその決心がついた。」
素子「決心?革命とは何だ?」
バトー:タチコマ、まだ奴等の通信に枝は付けられねえのか?
タチコマ:はい。素数を元にランダムで暗号を変えている様なので・・・
バトー:ん?伏せろ!
バトー:移動する。
パズ:分かった。
ボーマ:ああ。
バトー:外へ逃げるぞ。タチコマ、枝は?
タチコマ:もう少しです。
素子「クゼ。お前は何故難民のリーダーになった?そもそも、ウイルスによる思想誘導からどうやって抜け出した?」
クゼ「俺は元々難民を解放しようと言う目的があった。その為個別の十一人が発症した訳だが、奴等と行動を共にした時思想の差異に気付いた。ウイルスが分離出来たのもその為だろう。」
素子「では何故難民の解放を?ユーラシアを彷徨った様だが、それと関係があるのか?」
クゼ「それは・・・直接関係無い。大陸を旅したのは自分の動機を再確認する時間が欲しかっただけだ。俺がイメージする革命、解放を実行する事が出来るのかをな。」
素子「お前の言う革命とは何だ?」
クゼ「人の、上部構造への移行。硬化したシステムを捨て、人とネットとが融合すると言う事だ。」
素子「ネットと融合するだと?」
タチコマ:4課の通信コードの解析はどうだ?
タチコマ:うーん、もうちょい・・・
タチコマ:何とかこの原潜にハッキングをかけられないかな?
タチコマ:まず無理だよ。何せ作戦行動中の潜水艦は完全なスタンド・アローンだから。
タチコマ:乗組員の個人メールとかどう?規則違反の乗組員とかに枝を付ければ・・・
タチコマ:成る程。試してみる価値はあるかも。
トグサ「課長、お連れしました。」
荒巻「プロト、ドアを開けろ。」
荒巻「茅葺総理、ご無事でしたか。」
茅葺「状況は聞きました。米帝とのホットラインをこの部屋に回せるでしょうか?私から核攻撃の中止を要請してみます。」
荒巻「お願いします。彼等がこの事態を認めるかどうかが鍵ですが。」
茅葺「そうですね。」
4課課員「動くな!周囲を取り囲んだ!プルトニウムを置いて光学迷彩を切れ!」
タチコマ:バトーさん、枝が付きました!
バトー「分かった!今置く!」
バトー:ケースを置くのと同時に壁際迄ダッシュしろ。
サイトー&パズ&ボーマ:了解。
4課課員「動くな!同士撃ちになる!」
バトー「今から光学迷彩を解く。その上で、まだ任務を遂行する気があるなら俺を撃て。だが俺の顔を見て納得したら話を聞け。大事な事だ。」
4課課員「お前・・・」
4課課員「その目は・・・元レンジャーか?」
バトー「そうだ。」
クゼ「俺は半島での出来事で人生を達観した。矛盾した秩序、強者による搾取、腐敗した構造。だが俺を最もがっかりさせたのは人々の無責任さだった。自分では何も生み出す事無く何も理解していないのに、自分にとって都合の良い情報を見つけると逸早くそれを取り込み踊らされてしまう集団。ネットと言うインフラを食いつぶす動機無き行為が、どんな無責任な結果をもたらそうとも何の責任も感じない者達。俺の革命とはそういった人間への復讐でもある。」
素子「復讐?」
クゼ「俺は子供の頃から全身義体だった為に心と体の不一致を絶えず感じていた。出来る事なら不自由な体を捨て、ネットの海へ漕ぎ出したいと考えていた。そんな俺にアジア難民達は少なからず生きる希望を与えてくれた。彼等は俺の作り物の顔をとてもいい顔だと言い、ゴーストが顔に現れているのだと褒めてくれた。俺はその時初めて肉体と精神は不可分な存在なのではないかと実感し、自分も肉体を持つ人間なのだと思う事が出来た。だが、そんな彼等も一度口当たりの良い情報に出会うと、やはり都合の良い方向へと簡単に流れていってしまう。人間は元々低きに流れる様に出来ている物らしい。」
素子「で、復讐をどう果たすつもりだ?」
クゼ「俺に結線している者の記憶とゴーストをネット上に運び去る。核が投下されればそれで彼等も肉体を喪失するが強制的な進化を遂げる可能性が手に入る。」
素子「彼等がネット上で個を特定し続けられる可能性は?」
クゼ「それは分からない。だが先駆者として下部構造に残った人間に対し絶えず上部構造を意識させ、啓発していく存在にはなれるだろう。太古の昔人類が霊的な存在に対し尊敬や畏怖を感じてきた様にな。」
素子「それがお前を落胆させた者達への復讐と救済か?」
クゼ「俺は革命と信じているがな。お前も見た所全身義体の様だな。なら肉体と精神の不一致と言う疑心暗鬼に悩まされた経験は少なくはあるまい。どうだ、俺と一緒に来るか?」
素子「難民は、行くつもりなのか?」
クゼ「ああ。残念ながらな。彼等の多くは核による自爆テロと言うシナリオを実践する事の方を望んでいる。自分達は負けなかったと思い込みたいんだろう。それもまた低きに流れる行為だと言うのに・・・」
素子「そうか。」
素子:バトー。私は今からクゼの言う方法で難民を救出してみる。お前は核攻撃の事実を自衛軍に知らせるんだ。聞いてるか?バトー。
バトー「馬鹿野郎・・・!お前を一人で行かせやしない・・・待ってろ・・・行かせやしねえぞ!」
サイトー「何を待ってるんだ?」
ボーマ「分からん。」
4課課員「とにかくこれを持っていこう。陸自も我々の話なら信じるかもしれん。」
陸自隊員「第二次空爆が終了し次第出島内に進攻、査察団の受入れ準備に入る。」
> 我来回应