ユーミンが必要だった理由 松任谷由実×鈴木敏夫トークショー
ユーミンが必要だった理由 松任谷由実×鈴木敏夫トークショー
スタジオジブリのアニメーション映画「魔女の宅急便」「おもひでぽろぽろ」のブルーレイディスク発売を記念したトークイベントが12月9日、東京・南青山のスパイラルホールで開かれた。「魔女の宅急便」に挿入歌「やさしさに包まれたなら」「ルージュの伝言」を提供したシンガーソングライターの松任谷由実さんとジブリの鈴木敏夫プロデューサーが公開当時を振り返った。
松任谷由実(まつとうや ゆみ)=左
1954年、東京都出身。72年デビュー。翌年、ファーストアルバム「ひこうき雲」を発表する。昨年、デビュー40周年を迎えた。アルバムの総売り上げは女性アーティスト初の3000万枚を突破。
鈴木敏夫(すずき としお)=右
1948年、愛知県生出身。雑誌「アニメージュ」の編集長を経て、スタジオジブリ設立に参加。数多くの作品でプロデューサーを務める。最新作「かぐや姫の物語」「風立ちぬ」が今夏2本同時公開
◇
――ユーミンさんは普段こういうイベントに出ないですよね。
松任谷 10年にいっぺんぐらい(笑)。
――本日はユーミンさんの「やさしさに包まれたなら」「ルージュの伝言」が挿入歌に起用されることになった経緯を語っていだこうと思います。
鈴木 音楽について決めなきゃいけない打ち合わせの前夜に、ガールフレンドとユーミンのコンサートに行ったんですよ。それが初めてのユーミン体験。それで翌日、監督の宮崎駿と音楽演出をやっていた高畑勲に「ユーミンがいいんじゃないかな」と提案したんです。
松任谷 そうだったんですか。
鈴木 実は宮崎駿はユーミンの大ファンで、当時は朝から晩までずっと聴いていたんです。だから僕の提案に宮崎駿も高畑勲もすぐに賛成。
松任谷 私の記憶だと最初は書き下ろしを依頼されたんですよね。
鈴木 そうです。
松任谷 ところが、どこにポイントを持っていったらいいんだろうと悩んでいる間に、どんどん時間が過ぎて。
鈴木 そうなんですよ。一年以上も事務所に通いました(笑)。
松任谷 すみませんでした(笑)。でも結果的にはぴったりの曲を選んでいただいた。本当にラッキーでした。
鈴木 あの歌がないと成立していないし、あの映画の気分って出ない。
松任谷 やったー! 鳥肌たちました、今。それは多分、ノスタルジーがあったということですね。
鈴木 そう。あの2曲がいいというのは高畑さんが言い出したんです。
松任谷 「ルージュの伝言」は、キキがホウキの上でラジオをかけると始まりますよね。先輩の魔女が横に並んで「うるさい!」って言われてラジオを切るところがあるでしょう。作者としてはあそこがうれしかったですね。あのまま流れるのは、さしでがましいような気がして。登場人物が切ってくれたことで印象に残るシーンになりました。
――ユーミンさんは、昨日ブルーレイで「魔女の宅急便」をご覧になったそうですね。
松任谷 劇場で観た時には気づかなかったことがたくさんありました。自分がより大人になったせいか、公開当時に観た時よりも切なく感じました。一番よかったのは、デッキブラシに乗ってトンボを助けにいくところ。デッキブラシでも飛べるのかキキがアップになる場面で泣きました。健気なんですよ。
鈴木 ありがとうございます。そういえばユーミンさんのベストアルバムCD「日本の恋と、ユーミンと。」を聴きました。これは売れる!
松任谷 一曲目は「やさしさに包まれたなら」ですよ。
鈴木 実はこのアルバムを何回も聴いてているうちに新鮮に感じた曲が「ひこうき雲」なんです。歌詞が気になって。
松任谷 確かにジブリっぽい。
鈴木 今、宮崎が新作を作っているのですが、次の映画に「ひこうき雲」を使ってみたらどうかなって思ったんです。そうしたら宮崎も「ぴったり」だって。
松任谷 本当ですか。このために40年やってきたのかなというくらいうれしい。だって私のデビューアルバムの曲ですから。もう後にはひけませんよ(笑)。
(2013年2月13日 読売新聞)
スタジオジブリのアニメーション映画「魔女の宅急便」「おもひでぽろぽろ」のブルーレイディスク発売を記念したトークイベントが12月9日、東京・南青山のスパイラルホールで開かれた。「魔女の宅急便」に挿入歌「やさしさに包まれたなら」「ルージュの伝言」を提供したシンガーソングライターの松任谷由実さんとジブリの鈴木敏夫プロデューサーが公開当時を振り返った。
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松任谷由実(まつとうや ゆみ)=左
1954年、東京都出身。72年デビュー。翌年、ファーストアルバム「ひこうき雲」を発表する。昨年、デビュー40周年を迎えた。アルバムの総売り上げは女性アーティスト初の3000万枚を突破。
鈴木敏夫(すずき としお)=右
1948年、愛知県生出身。雑誌「アニメージュ」の編集長を経て、スタジオジブリ設立に参加。数多くの作品でプロデューサーを務める。最新作「かぐや姫の物語」「風立ちぬ」が今夏2本同時公開
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――ユーミンさんは普段こういうイベントに出ないですよね。
松任谷 10年にいっぺんぐらい(笑)。
――本日はユーミンさんの「やさしさに包まれたなら」「ルージュの伝言」が挿入歌に起用されることになった経緯を語っていだこうと思います。
鈴木 音楽について決めなきゃいけない打ち合わせの前夜に、ガールフレンドとユーミンのコンサートに行ったんですよ。それが初めてのユーミン体験。それで翌日、監督の宮崎駿と音楽演出をやっていた高畑勲に「ユーミンがいいんじゃないかな」と提案したんです。
松任谷 そうだったんですか。
鈴木 実は宮崎駿はユーミンの大ファンで、当時は朝から晩までずっと聴いていたんです。だから僕の提案に宮崎駿も高畑勲もすぐに賛成。
松任谷 私の記憶だと最初は書き下ろしを依頼されたんですよね。
鈴木 そうです。
松任谷 ところが、どこにポイントを持っていったらいいんだろうと悩んでいる間に、どんどん時間が過ぎて。
鈴木 そうなんですよ。一年以上も事務所に通いました(笑)。
松任谷 すみませんでした(笑)。でも結果的にはぴったりの曲を選んでいただいた。本当にラッキーでした。
鈴木 あの歌がないと成立していないし、あの映画の気分って出ない。
松任谷 やったー! 鳥肌たちました、今。それは多分、ノスタルジーがあったということですね。
鈴木 そう。あの2曲がいいというのは高畑さんが言い出したんです。
松任谷 「ルージュの伝言」は、キキがホウキの上でラジオをかけると始まりますよね。先輩の魔女が横に並んで「うるさい!」って言われてラジオを切るところがあるでしょう。作者としてはあそこがうれしかったですね。あのまま流れるのは、さしでがましいような気がして。登場人物が切ってくれたことで印象に残るシーンになりました。
――ユーミンさんは、昨日ブルーレイで「魔女の宅急便」をご覧になったそうですね。
松任谷 劇場で観た時には気づかなかったことがたくさんありました。自分がより大人になったせいか、公開当時に観た時よりも切なく感じました。一番よかったのは、デッキブラシに乗ってトンボを助けにいくところ。デッキブラシでも飛べるのかキキがアップになる場面で泣きました。健気なんですよ。
鈴木 ありがとうございます。そういえばユーミンさんのベストアルバムCD「日本の恋と、ユーミンと。」を聴きました。これは売れる!
松任谷 一曲目は「やさしさに包まれたなら」ですよ。
鈴木 実はこのアルバムを何回も聴いてているうちに新鮮に感じた曲が「ひこうき雲」なんです。歌詞が気になって。
松任谷 確かにジブリっぽい。
鈴木 今、宮崎が新作を作っているのですが、次の映画に「ひこうき雲」を使ってみたらどうかなって思ったんです。そうしたら宮崎も「ぴったり」だって。
松任谷 本当ですか。このために40年やってきたのかなというくらいうれしい。だって私のデビューアルバムの曲ですから。もう後にはひけませんよ(笑)。
(2013年2月13日 読売新聞)
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